福祉 × 地域のwell being
分野横断的な対応が求められる課題
社会福祉学科 コミュニティ福祉系
准教授 平坂 義則 (ひらさか よしのり)
地域で暮らす人々が、その生活の中で直面する困難・生きづらさは、多様かつ複雑で対応が難しい様々な課題として顕在化しています。
ここでは、一つの課題として、「ミッシングワーカー」(以下、MW)を取り上げます。
MWとは、労働経済学上の概念ですが、雇用統計上、求職活動をしていない人は、失業者に反映されないため、労働市場から「消えた労働者」と表現されています。
近年、社会的孤立や経済的な困窮を背景とした介護離職や中高年のひきこもりなどの問題により働きたくても働けなかったり、仕事を求めず、親の年金に依存して暮らす「隠れ貧困層」が急増しているのです。
参考:「ミッシングワーカー働くことをあきらめて・・・」(NHKスペシャル、2018年6月)放送、『ミッシングワーカーの衝撃 働くことを諦めた100万人の中高年』(NHK出版、2020年3月)
私が支援していた事例が取り上げられ、8050問題や対象者の早期発見・対応の必要性などについて提言しています。
MWのような生活困窮の対象者には、社会的なつながりが弱く自尊心を喪失している人も多いため、本人自身が課題と向き合い解決していくことが重要で、 それを促すためのソーシャルワーカーの専門性や方法について考えることが大切です。また、地域共生社会に向けて、一人ひとりの尊厳に立ち、地域で支え合いながら生活課題に向き合う地域のwell beingについて全体像の理解を深めていくことも必要となります。
事例を理解する枠組みとして、「生活困窮者の氷山モデル」を活用しています。表面にある「困りごと」の背景にある状況とともに、排除を強化する価値観・思想を理解し、個人だけでなく、地域社会に働きかける支援をしていくことが求められています。