福祉×幼児教育・保育

子どもたちが自然や社会のワンダーに触れ探究を深める幼児教育・保育
人間福祉学科 生涯発達支援系
講師 若林 陽子(わかばやし ようこ)

私の専門は主に日本の幼児教育・保育実践の歴史です。しかし、最初からその分野への関心が明確だったわけではありませんでした。大学生だった時、子どもに関わる教育・発達心理学や教育学、社会学に幅広く興味を持っていましたが、興味を絞りきれず卒論のテーマ選びに困っていました。その頃、戦前から戦後にかけて保育者と大学の研究者がともに保育をつくり果敢な挑戦を続けている、「保育問題研究会」という団体と出会いました。以来現在に至るまで、同研究会を起点として、子どもが自分自身の知識を存分に用い広げ再構成する姿をとりわけ大切にする保育実践や子ども観が、日本の歴史と現在にどのような示唆を与えているかについて関心を寄せています。そして、保育といっても実践内容は幅広いため、言葉と芸術に関する保育に焦点化しています。

また、私自身も大学側スタッフとして院生時代から保育者とともに保育をつくる活動に関わらせて頂けた経験を踏まえ、授業や実習指導では、保育はきわめて創造的な活動であることを伝えています。授業や実習で与えられた課題をただこなすのではなく、例えばなぜこの時そのように子どもと関わるのかと自問自答をするように、結論を急がず疑問と格闘することこそ大切と考えています。岩手県立大学には幸い、文具等も豊富に揃い学生の試行錯誤を可能にする広い教室が複数あります。
戦争の絶えないこの世界において、まず子どもは生命や安全を奪われやすく、その意味で残念ながら弱さを持っている面があります。しかし、子どもは学校に通い始めるより前からすでに他者と関わり自然や社会のワンダーに触れながらそれを表現する、力強さも持っています。そのような子どもの表現をとらえなおかつ豊かに広げてゆく幼児教育・保育に、どの人間の声も潰されることのない社会の可能性を見たいと考えています。