福祉 × コモンズ
「他者」と協力するための手がかりはどこに?
社会福祉学科 福祉政策系
教授 高橋 聡(たかはし さとし)
「技術が発展しグローバル化した現代社会では、ボーダーレスな相互協力関係がこれまでになく重要です」などと言われます。まあ同感ですが、身近にいないあるいは生き方や価値観の違う人たちとどうやって協力するのでしょう?
皆が周囲と仲良くすれば世界が平和になるとは限りません。人は心理的にも道徳的にも、身内びいきと外部者排除の傾向を共有しています。いま周囲を見ても、地域間、文化間、世代間など分断が目立ちます。「自分は頑張っているのに不当に扱われ、彼らは得をしている…」実際、立場の違う人と協力しようにも方法がわかりません。
文明が構築してきた方法が、制度を介した協力です。社会保障、学校教育、公共交通、雇用関係管理等のシステムは、立場の違いを超えた公共の利益のための協力の組織体であり、制度の改善を通じて協力の改善が期待できます。
誰も生活基盤を自力では用意できません。協力を一から組織することも困難です。協力の経路は公共の社会的資産(コモンズ)を通じた公共利益の現実化であり、その総合的戦略が福祉国家である、という視点から研究しています。