岩手県立大学 社会福祉学部 岩手県立大学 社会福祉学研究科

社会福祉学研究科

福祉 × 創造
― 教員の活動紹介 ―

福祉 × ICT

子どもと保育者のウェルビーイングを支えるICT・AI活用の実践研究

人間福祉学科 生涯発達支援系
准教授 井上 孝之(いのうえ たかゆき)

 専門は保育学・幼児教育学。主として、保育実践における環境構成、保育者の援助技術、保育ICTの活用による業務改善を研究領域としている。

メディアセンター教員コーナー

 2013〜2014年度には、全国保育士養成協議会東北ブロック研究委員長として「保育実習指導の実際に関する調査研究」を主導した。この研究委員会では、各養成校のグッド・プラクティスを集約し、「保育実習指導のミニマム・スタンダード(東北版)」の策定を目指した。しかし、より持続的な改訂体系を実現するため、出版物として固定化するのではなくWebサイトを開設し、委員会による継続的なアップデートを可能とする方式へ転換した。研究成果は現在も更新されている。(→ 全国保育士養成協議会 東北ブロック

 研究テーマは、幼児期の教育は「環境を通して行われる」という基本的な考え方に基づき、環境構成や保育者の判断・援助技術を中心に展開している。これまでに『保育原理』『保育内容総論』『保育者論』『障害児保育』など、保育者養成課程向けのテキストを執筆してきた。また、小学校入学期の移行支援を扱った『小1プロブレムを防ぐ保育活動』や、保育実践者向けの『保育現場で使えるカウンセリング・テクニック』など、実践研究に基づく著作も行っている。

CEATEC2025(幕張メッセ)

 近年は、保育業務の効率化と質向上を目的とした保育業務支援システムの高度化研究を展開している。INPIT(独立行政法人工業所有権情報・研修館)の支援を受け、ICTを活用した保育記録システム、保育給付業務DX、子どもの発達経過の可視化を可能にするシステムを開発し、これまでに6件の特許を取得した。これらの技術を応用した製品は全国の自治体・保育施設で導入され、実践的な効果を上げている。
 こうしたシステムの導入により、保育者が煩雑な事務作業から解放されることで負担が軽減し、その分子どもと向き合う時間が確保され、保育の質の向上が期待されている。今後は、保育AIの導入によって保育者と子どもの双方のウェルビーイングの向上を目指して研究を進めていく予定である。

 学生サークル「どろんこ隊☆」の顧問として、子どもの学習支援、居場所支援、子ども食堂の運営など、社会的包摂に関わる実践教育を展開している。これらの活動は、学生が主体的に獲得した助成金によって運営されており、学生自身の企画力や実行力の育成にもつながっている。学生によるソーシャル・イノベーション活動を伴走的に支援し、地域連携型の保育・福祉研究の実践基盤の形成にも取り組んでいる。→(国連アカデミック・インパクト(2024年活動報告)