福祉 × 状況の力を考える
普通の人を「凶悪犯」や「英雄」に変えるのは何か。
人間福祉学科 福祉心理系
教授 田村 達(たむら とおる)
凄惨な暴力や殺人、狡猾な詐欺など、深刻な被害・損害を引き起こした人物に対して、近所の人たちが「そういうことをする人には見えなかった」と言うことがあります。一方で、事件・事故や災害の場所で自分の危険やコストを顧みずに他の人のために動く人たちに、案外普通の人と変わらない側面が見えたりすると、何だか安心するような気持ちになります。
人々が目を背けたくなるような事件を起こす人、あるいは人々が称賛して止まないような行動を起こす人というのは、必ずしも我々とは異なる特異な存在とは限らず、多くの場合、普通の人だったりします。それなら、我々と変わらない普通の人たちにそういった行動を生じさせるものとは何なのか。社会心理学では、その場面に作用する状況の力に目を向け、それを探ろうとします。
何かの状況的条件がそろえば、人の、あなたの行動が、劇的に変わるのかもしれない。そしてもしかしたら、そのきっかけとなる状況的条件を作り出すのはあなたかもしれない。社会心理学は、人の行動の心理過程と状況的条件について考えることで、人の未来、あなたの未来を良い方向に変える可能性を持った学問です。